iha place dialogue 

【第1回】「公共空間に居場所をつくる」

ストリートファニチャーihaでは、「Good Place Making」―街に居場所をつくる―ことを掲げています。このたび、その想いや課題、国内外での取り組み、そしてこれからの公共空間の在り方についてさまざまな人と語り合う、iha place dialogueとして連載を始めることにしました。

その第1回目は、ihaを展開するミヅシマ工業代表取締役の水島良氏と、新たにihaのプロダクトディレクターに就任したsoell株式会社/NEW NORMAL代表の土井智喜氏との対談をご紹介いたします。

土井智喜氏(写真左) プロフィール:

桑沢デザイン研究所卒業後、インテリアデザイン事務所を経て 2010 年よりフリーランスとして活動。2022 年には soell 株式会社 を設立し、プロダクト・インテリアデザインを中心に、企業の素材や技術の可能性を引き出す共創型デザイン支援を行っている。また、「新常識となるデザインをつくる」をコンセプトに掲げるデザインプロジェクト「NEW NORMAL」の代表として、企業とデザイナーの協業支援にも取り組んでいる。2025年には、ミヅシマ工業と協業し、iha初の自社製品となる「Sou」の開発に参画。プロダクトのコンセプト設計からデザインまでを担当した。

まず土井さんが、ihaのプロダクトディレクターとして参画された経緯から教えてください。

土井:きっかけは本当に偶然でした。当時の教え子がミヅシマ工業さんのショールームを訪問するという話があって、僕も「せっかくだから一緒に行こう」と思い、臨場する形でついて行ったのが始まりです。その時点では、ミヅシマ工業さんがどういう会社なのか、ihaというブランドがどんな構想を持っているのか、正直そこまで理解していたわけではありませんでした。

水島:ihaプレイスで初めてお会いしましたね。

土井:そうです。ショールームに伺うと、水島社長がいらっしゃって、社員の皆さんもとてもフランクに迎えてくださった。多くの方が出てきてくださって、「この会社は本気で何か新しいことをやろうとしているな」と感じました。会社全体に前向きな熱量があるという印象でした。

水島:ありがとうございます。

土井:その場で水島社長が「ストリートファニチャーを日本に広めていきたい」とおっしゃったんです。その言葉が強く印象に残りました。僕自身、以前公共空間設計に関わる仕事をしていて、この分野の可能性は感じていました。ただ、日本ではまだ市場が成熟していないし、選択肢も少ない。だからこそ、「広めたい」と明言するメーカーに出会えたことが大きかったんです。

水島:ミヅシマ工業は京都に生産工場を持つ板金メーカーで、創業90年になります。屋外用ゴミ箱や玄関マットなど、公共空間向け製品を中心に作ってきました。公共空間というフィールドは、私たちにとって新規参入ではなく、長年向き合ってきた領域です。
ただ、私が代表になったときに考えたのは、「良い製品を作ったから買ってください、では会社は続かない」ということでした。

土井:そのとき水島社長は、「社会課題」という言葉を使われていましたよね。

水島:はい。私は、メーカーは社会的課題を解決する存在であるべきだと思っています。私自身、小さい頃は静岡の自然豊かな地域で育ちました。近所付き合いが深く、家の鍵を開けっぱなしにしているような環境でした。そういう場所から都市に出てきたときに感じたのが、「空が狭い」「緑が少ない」そして何より「人が集まる場所が少ない」ということでした。

土井:都市はどうしても通過する場所になりがちですよね。

水島:その通りです。街はあっても、人が滞在できる場所が少ない。私は、人が集まるためには仕掛けが必要だと考えました。ベンチやキッチンカーのように、人がそこに留まる理由があることで、初めて人が集まる空間になる。ミヅシマ工業はものづくりの会社ですから、その仕掛けをプロダクトとして提供できるはずだと思いました。

——その問題意識からihaが生まれた。

水島:はい。ihaはサンスクリット語で「居場所」という意味のブランド名です。家の外に出たときにも、自分の居場所を公共空間の中で見つけてほしい。その思いを込めました。そして私たちは「Good Place Making」というコンセプトを掲げています。

土井:「Good Place Makingとは、単に空間に家具を置くことではなく、公共空間に居心地の良い場所をつくることですよね。

水島:そうです。居心地の良さは人それぞれ違います。木が多い公園で過ごしたい人もいれば、街中で少し腰をかけたい人もいる。そうした多様な価値観に応えられる場所をつくることがGood Place Makingです。
そしてGood Placeができると人が集まり、人が集まると店舗やサービスが集まり、街が元気になる。つまり、公共空間の質を上げることが街の経済循環を生むと考えています。

土井:僕が強く共感したのは、その思想をメーカーが本気で語っていることです。多くの企業は「海外の良い製品があります」といったモノありきのアプローチを取りますが、ihaは最初に「街を良くする」という目的がある。そこにブランドとしての強さを感じました。

水島:ミヅシマ工業には自社工場があり、板金加工から溶接、粉体塗装、組立、出荷まで一貫生産体制があります。その90年の製造基盤があるからこそ、思想だけでなく実際に形にできる。

さらにストリートファニチャーは屋外で使われるため、売って終わりではない。塗装の劣化や破損が起きることもありますが、私たちは自社でメンテナンスができます。そこまで含めて公共空間に責任を持つ。それがメーカーの役割だと考えています。

当社の主力商品の一つ、マット製品(施設向けのエントランスマット)も同様です。アルミ部分を残して、劣化した繊維部分だけを交換することで、10年、20年と使い続けられる。資源を無駄にしない設計も、私たちのものづくりの姿勢です。

土井:その「売って終わりにしない姿勢」も、僕が共感したポイントです。公共空間に置かれる家具は長期的に使われるものですから、導入後の維持まで見据えることが重要です。

水島:海外ブランドのセレクトだけでなく、日本の工場で、日本のデザイナーとつくるストリートファニチャーを増やしていきたい。その第一歩として、土井さんとミラノサローネに向けたプロトタイプ制作にも取り組みました。
ihaはまだ始まったばかりですが、公共空間に居場所をつくるブランドとして、これから具体的な形にしていきたいと思っています。

土井:日本の公共空間にはまだ伸びしろがあります。その可能性に本気で挑戦しているのが、ihaだと思います。

(第2回に続く)