iha place dialogue 

【第3回】「ミラノデザインウィークから始まった挑戦」

ihaを展開するミヅシマ工業代表取締役の水島良氏と、新たにihaのプロダクトディレクターに就任したsoell株式会社/NEW NORMAL代表の土井智喜氏との対談第3回をご紹介いたします。

——ihaは海外ブランドのセレクトも行っています。

水島:はい。海外の優れたストリートファニチャーブランドをセレクトして展開しています。ただ、それだけではなく、「日本の工場で、日本のデザイナーとつくるストリートファニチャー」を増やしていきたいと考えています。その第一歩として昨年、土井さんと当時、土井さんの教え子だった安田在人さんとともにミラノデザインウィークに向けてプロトタイプ制作に取り組みました。

——ミラノデザインウィークへの出展は、どのような経緯で決まったのでしょうか。

水島:ihaとして単独で出展したというよりも、NEW NORMAL[2]というプロジェクトに参加しての出展でした。NEW NORMALは、日本のメーカーやデザイナーが協業して、新しい価値を国内外に発信していく取り組みです。その枠組みの中で、ihaとしてもプロトタイプを発表する機会をいただきました。

[2] NEW NORMALは「新常識となるデザインをつくる」をコンセプトに、日本だけでなくミラノをはじめとした海外でも展示を行っているデザインプロジェクト。プロジェクトは企業とデザイナーが出会うところから始まり、海外や国内での展示を経て、約1年かけて協業することでアイデアやデザインを育てていきます。

土井:僕がihaに関わるきっかけも、NEW NORMALでミヅシマ工業さんと協業したことでした。私が代表を務めるNEW NORMALは、企業とデザイナーが協業して、日本のものづくりや新しいデザインの可能性をつくり、発信していくプロジェクトです。その中でihaが何を提示できるか、というのが最初のテーマでした。

水島:海外ブランドのセレクトだけではなく、自分たちのプロダクトを世界に問う場が必要だと。その最初の機会が、NEW NORMALとして参加したミラノデザインウィークでした。

土井:ミラノデザインウィークは、世界中のデザイン関係者が集まる場です。そこで発表するということは、単に「新作を見せる」ということではなく、日本のストリートファニチャーはどうあるべきかを問い直すことでもあると感じていました。

——そこで発表されたのが、「Sou」というストリートファニチャーですね。

土井:はい。Souは、いわゆる“ベンチ”として設計したわけではありません。僕が意識したのは、用途を固定しないことです。座るための家具、と決めてしまうと、それ以上の使い方が広がりにくい。

Sou:ミヅシマ工業株式会社×安田存人+土井智喜

Souは「層」からとった名前で、そこで高さ違いのユニットを組み合わせる構成にしました。高いものは腰掛けにもなるし、テーブルにもなる。低いものは子どもが座ったり、寝転がったりもできる。

水島:実際にミラノサローネで展示しているとき、大人が一番低いタイプに座ると、子どもと同じ目線になる場面がありました。子どもがその上で寝転がったり、自由に使っていた。あれを見て、「こう使ってください」と決めなくてもいいんだと感じました。

土井:Souは、使い方を規定しないことで、自然な行為が生まれるように設計しています。ベンチでもあり、テーブルでもあり、遊具のようにも使える。その曖昧さが、公共空間には必要だと思いました。

水島:海外の来場者から「これは何ですか」と聞かれることもありましたね。

土井:ありました。ただ僕は、「ベンチです」とは言い切りませんでした。どう使うかは使う人に委ねたいと思っていました。
日本では用途を明確にすることが重視されますが、ミラノではその曖昧さを面白がってくれる反応が多かった印象があります。

——NEW NORMALという文脈で出展したことは、どんな意味がありましたか。

水島:NEW NORMALは、日本のものづくりの新しい形を世界に提示するプロジェクトです。その中でihaが参加できたことは、ストリートファニチャーも日本のものづくりの一部として再定義できるという意味があったと思います。ihaとしては、まだまだ第一歩です。ただ、日本発のストリートファニチャーが海外の場でも通用するという手応えはありました。

——今後の展開についてはどうお考えですか。

土井:Souについては、国内外の展示で得たフィードバックを元にサイズやバリエーションの見直しを行、販売に向けて進めています。また、日本の公共空間は場所ごとに条件が異なるため、それぞれの環境に適合するストリートファニチャーのバリエーションを、さらに充実させる必要があると考えています。

水島:海外ブランドのセレクトも続けながら、日本の公共空間に合うストリートファニチャーを増やしていきたいと考えています。色や仕様も含めて、日本の街に合う提案をしていきたい。

土井:今後ihaにはさまざまなデザイナーが関わっていくと思います。その中で僕の役割は、ブランドの交通整理です。思想を保ちながら、多様なプロダクトを展開していく。そして、日本の空間に合う形や色に編集していくことが重要だと考えています。

水島:ihaのショールームとして一昨年大阪市の北堀江にオープンしたiha placeも、単なるショールームではなく、製品を置いたときの空間の変化を感じてもらえる場所にしています。ストリートファニチャーは、単体ではなく、置かれた環境とともに意味を持つものです。

iha placeは、“Good Place Making”を体感する空間

すでにイベント開催やスペース貸しも行なっていますが、今後さらに街づくりの発信拠点にしていきたいと考えています。外空間を模した展示で、実際に設置したときのイメージを持ってもらう。製品だけでなく、公共空間の新しい価値を伝えていきたい。

土井:公共空間は、これからの都市の質を左右する重要な領域です。その未来に、ihaは本気で向き合っているブランドだと思います。

水島:公共空間は、日本ではまだ成熟していない市場です。だからこそ伸びしろがある。Good Place Makingをプロダクトと事業の両面で成立させることが、ihaの挑戦です。